
11月3日(月)、恒例の「第九」を聴きに行く。行ったはいいが、第一、第二楽章ともにうたた寝して沈没。気持ちの良い暗がりは、私にとって鬼門です。
バリトンがいきなり立ち上がって歌いだすところで、ハッと目が覚める。どうやら第4楽章らしい。
うしろに控える合唱が「Freude!(友よ!)」と応え、歓喜の世界へ聴衆は導かれる…
はずだったが、40代前半とおぼしき臨席の男がずっと貧乏ゆすり。まあ、それは許そう。
あきれたのは『歓喜の歌』に入ったあたりからで、何と舞台に向かってタクトを振りだした。なるべく見ずに演奏に専念しようとしたが、その手先が視野に入ってうるさい。前席には振動も伝わりさぞかし嫌な思いをしていたことだろう。
その男、次に掛け声をかけはじめる。ソロには「ブラーボ」女性のソロには「ブラーバ」(これは正しいようです)それだけで終わればいいのに、やたらめったら声を掛けている。イタリア語らしかったので、それが的を得た称賛なのかどうかわからないが、オーケストラの団員の多くが「なにあれ」的な顔で二階席の私の隣を見上げていたので、どうやらヘタクソな声掛けだったのだろう。

第4楽章の後半は、染み入るように美しく、ハプニングはあったにせよ、聴きにきてよかったと思った。ところで、合唱は舞台に出てからの待ち時間が30分ほどある。舞台で微動だにしないのはさぞかし苦痛だろう。現に中学生らしき女の子が気分が悪くなり座り込んでいた。最前列だったので目だってしまい気の毒なことであった。
ホールを出て電停へ急ぐ道すがら、女性グループの話す声が聴こえた。
「あの長い時間を耐えなくてはならないかと思うと、出演の腰がひけるわね」
全く同感だ。毎年誘われるのだが、同じ理由から丁重にお断りしている。